結論: 「見積書の受け取りまでは3月中OK」という考え方もあります
まず、線引きを表で見てください。
(※当初予算が3月議会で通っていて、債務負担行為は設定していないケースの話です)
| 事務の段階 | この考え方での扱い |
|---|
| 見積依頼の起案・見積書の提出依頼 | ○ 3月中OK |
| 見積書の受け取り(徴取) | ○ 3月中OK |
| 契約相手方の決定(自治体側の承諾) | × 4月1日以降 |
| 契約締結 | × 4月1日以降 |
そもそも「見積依頼はいつからOK」と直接書いてある条文はないんです。解説書や各自治体の運用にもとづく考え方なので、自治体によって幅があります。
筆者は、3月議会で当初予算が通ったあと、見積依頼と見積書の受け取りまでを3月中に済ませ、相手方の決定から先を4月1日以降に回す運用を経験してきました。
なぜ「見積書の受け取りまで」はセーフなのか
「契約はダメなのに、見積もりはいいの?」と思いますよね。
カギは、見積書の役割にあります。
随意契約の見積書は、事業者からの「契約の申込み」にあたります。
買い物にたとえると、見積書は事業者からの「うちなら、この値段でできますよ」という提案です。
受け取っただけなら、こちらはまだ「お願いします」とは言っていません。約束は何もしていない状態です。
『地方公共団体契約実務ハンドブック』でも、年度開始前に見積書を受け取るのは「契約の申込みを受ける段階にとどまる」準備的な行為だから、差し支えない——と説明されています。
翌年度の予算を先に使う約束(債務負担)には、まだ踏み込んでいないからです。
逆に、見積もりを見比べて「この事業者にお願いしよう」と相手を選ぶ(=契約相手方の決定)のは、契約へ進む行為です。
ここから先は新年度の仕事として、4月1日以降に回すのが安全です。
ちなみに、ここでいう見積書は、予定価格の積算に使う「参考見積」ではなく、契約相手を選ぶために出してもらう見積書のことです。
そもそも、なぜ前年度中に契約してはダメなの?
自治体の予算には「会計年度独立の原則」(地方自治法208条2項)というルールがあるからです。
家計にたとえると「今月の生活費は、今月の給料から」
その年度のお金は、その年度の収入でまかなうのが大原則です。
そして、契約のようにお金を使う原因になる行為は、予算にもとづいて行う必要があります(地方自治法232条の3)。
4月1日からの業務に使うのは、新年度の財布(予算)。財布が開く前に「お願いします」と約束はできない——だから相手方の決定や契約締結は4月1日以降、というわけです。
ちなみに、この「お金を使う原因になる行為」のことを、地方自治法では「支出負担行為」と呼んでいます。
支出負担行為が分かると、ここまでの話をより理解できるようになりますので、自治体職員の基礎知識としてこちらの記事で押さえておいてください。
支出負担行為とは? 地方自治法の定義と予算執行の流れからわかりやすく解説
注意点
- すべての手続きを4月1日以降にそろえる運用の自治体もあります。それも間違いではありません
- 「準備行為はどこまでOKか」は、見解が分かれることがあります。たとえば4月1日付の契約締結起案をどこまで3月中に準備しておくかは、団体の規程・運用しだいです
- 実際の事務では、必ず所属団体の取扱いを確認してください
まとめ
- 見積書の受け取りまでは、準備的な行為として3月中OK——という考え方がある(『地方公共団体契約実務ハンドブック』にも同じ説明)
- 契約相手方の決定から先は、予算を使う約束に踏み込むので4月1日以降が安全
- ただし直接の条文はなく、運用には幅がある。最後は所属団体の取扱いを確認