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業務委託の最低制限価格はどう決める? 工事のようなモデルがない場合の設定方法2選

入札・契約全般2026年5月13日公開・2026年8月18日更新
質問

うちの自治体では、最低制限価格は建設工事と建設コンサル業務の入札にだけ設定しています。

物価高で人件費も上がっているためか、最近は清掃などの業務委託にも導入を促す通知が国から来ています。

ただ工事と違って参考にできるモデルがなく、どう設定すればいいのかわかりません。

ほかの自治体はどうやっているのでしょうか?

回答
📋
となりの庁舎 運営者
主な経験は入札・契約担当 通算8年

目次

  1. 結論: モデルがなくても使える、最低制限価格の設定方法を2つ紹介します
  2. なぜ国は、業務委託にも最低制限価格を求めるの?

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  • なぜ業務委託への導入は進まないの?
  • 設定方法① 予定価格の割合で決める
  • 設定方法② 入札額の平均で決める
  • まとめ
  • 根拠条文
  • 結論: モデルがなくても使える、最低制限価格の設定方法を2つ紹介します

    「工事と違って参考にできるモデルがない」— まさにそのとおりです。

    工事や建設コンサルの最低制限価格には「中央公契連モデル」に代表される、多くの自治体がお手本にしている標準的な算出方法があります。

    ところが建設コンサルを除く業務委託には、こうした共通モデルがありません。

    そこでこの記事では、導入済みの自治体が実際に使っている設定方法を2つ紹介します。

    • ①予定価格の割合で決める: 「予定価格の◯〜◯%」と範囲を決めておき、実際の最低制限価格は予算執行者または契約担当者が入札の前に決める方法
    • ②入札額の平均で決める: 計算ルールだけを事前に決めておき、実際の最低制限価格は開札後に、各者の入札額から計算して決まる方法

    この2つの方法の特徴は、モデルがなくても設定できることです。

    それぞれのメリットと注意点は、このあと順にお話ししますね。

    最低制限価格って、どんな契約にも設定できるの?

    そもそも最低制限価格は、どんな契約にも設定できるわけではありません。

    法令上の根拠である地方自治法施行令167条の10第2項が、対象を「工事又は製造その他についての請負の契約」に限っています(指名競争入札にも準用されます)。

    「請負」とは、仕事の完成を約束する契約のことです。

    契約の種類最低制限価格
    工事・製造の請負○ 設定できる
    清掃・警備などの業務委託○ 頼み方が請負なら設定できる
    物品の購入・賃借× 対象外

    「工事の制度」というイメージがありますが、条文上は請負全般が対象です。
    清掃や警備も、契約の中身が請負に当たるなら設定できます。
    逆に、物品を買う・借りる契約には設定できません。

    なぜ国は、業務委託にも最低制限価格を求めるの?

    早く2つの方法を知りたいところだと思いますが、その前に「背景」を少しだけ。
    ここを読んでおくと、2つの方法が「なぜその仕組みになっているのか」を理解しやすくなります。

    官公需(国や自治体が発注する仕事)には「中小企業がきちんと受注機会を得られるように」という法律が60年以上前からあります(官公需法)。
    この法律は自治体にも、中小企業者の受注機会の確保に努めるよう求めています。

    物価高で、この要請は一段と強まりました。
    2026年4月には「官公需における価格転嫁・取引適正化のために必要な措置」を講じるという国の方針が閣議決定されました。
    「価格転嫁」とは、上がったコストを契約金額にきちんと反映させることです。

    ところが国の調査(2026年6月公表)では、官公需の価格転嫁率は48.4%。
    コスト上昇分のうち、価格に乗せられたのは平均で半分以下でした。

    安すぎる金額での受注は、しわ寄せが現場の人件費に向かいます。
    清掃や警備のように人件費が中心の業務なら、そのまま働く人の待遇に影響します。
    「安すぎる入札は最初から排除する」— 国は最低制限価格を、価格転嫁を下支えする仕組みと考えているんです。

    だから工事だけでなく、業務委託を含む幅広い業種への導入を促しています。

    ようするに「中小企業を守るために、最低制限価格制度を入れなさい」ということですね。

    なぜ業務委託への導入は進まないの?

    では、国が旗を振っているなら、各自治体はもう導入しているのでしょうか。
    実態はそうではありません。

    総務省の調査(2026年4月1日時点)では、市区町村の約6割が、清掃・警備・給食といった工事関係以外の業種に最低制限価格などの制度を適用していません。
    同じ調査で、工事関係の業種(工事・測量・設計など)は約96%が適用。
    「工事関係」か「それ以外」かで、明らかに差がついています。

    では、なぜこんなに差がつくのでしょうか。

    それは「積算基準」があるかないかの違いなんです。

    工事には「共通の積算基準」がある

    全国の多くの自治体では、工事の予定価格を標準の積算基準と公表された労務単価で作っています。
    だから予定価格の中身も「直接工事費」「現場管理費」といった共通の費目(費用の項目)で組み上がっています。
    中央公契連モデルは、その費目ごとに掛け率を掛けて合計するだけの仕組み。

    共通の積算体系があるから、共通のモデルが成り立つんです。

    コラム

    そもそも「中央公契連モデル」って何?

    中央公契連の正式名称は「中央公共工事契約制度運用連絡協議会」。
    公共工事の主要な発注機関(国の省庁や独立行政法人など)が集まって、契約制度の運用を話し合う組織です。
    1983年(昭和58年)から40年以上続いていて、会長と事務局は国土交通省が担っています。

    ここが示している最低制限価格などのモデル(計算式)が、通称「中央公契連モデル」。
    費目(直接工事費・共通仮設費・現場管理費・一般管理費等)ごとに掛け率を掛けて合計する方式です。

    工事だけでなく、測量・建設コンサルタント等の業務についても、国土交通省が業種ごとの基準を示しています。
    工事や建設コンサルで導入が進んでいるのは、こうした「お手本」があるおかげなんです。

    業務委託には「共通の積算基準」がない

    一方、業務委託はどうでしょう。

    清掃・警備・給食調理・システム保守と、中身は多種多様。
    どの自治体でも同じように使われている積算の仕組みがなく、見積もりを取って予定価格を作ることも珍しくありません。
    掛け率を掛けようにも、掛ける相手の「費目」がないんです。

    実は2026年2月、国はビルメンテナンス業務(清掃など)の価格基準を示しました。
    中央公契連モデルのような共通モデルの「ビルメン版」ともいえるものです。

    でもこの基準も、予定価格を費目ごとに積み上げて作っていることが前提の式。
    見積もり頼みの自治体では、式に入れる数字がそもそも手元にありません。
    逆に言えば、国の積算基準で予定価格を組んでいる自治体なら、この基準はそのまま使えます。

    読者の疑問: じゃあ、業務ごとに積算基準を自作すれば?

    それが、正直かなりの大仕事なんです。

    先ほどの総務省調査でも、導入しない理由の上位は「必要性を感じていない」「体制・人手が足りない」「ノウハウや参考になる基準がない」でした。
    基準と積算の壁は、全国の担当者に共通の悩みなんです(もちろん自前で積算体系を整えて、この壁を乗り越えている自治体もあります)。

    そこで出番になるのが、冒頭でお話しした2つの設定方法 — モデルはもちろん、積算体系がなくても使える決め方です。

    次の章から実例つきで紹介します。

    設定方法① 予定価格の割合で決める

    1つ目の方法はシンプルです。

    「最低制限価格は、予定価格の◯〜◯%の範囲で設定する」と、要綱などで事前に決めておく。
    実際の額は入札の前に、その範囲の中で権限者が案件ごとに決める、というやり方です。

    実際の例を見てみましょう(執筆時点の公開資料に基づいています)。

    • 盛岡市(岩手県): 建物清掃・警備などの業務委託(予定価格100万円以上)が対象。最低制限価格は「予定価格の4分の3から10分の9までの範囲において契約担当者が定める額」とする

    範囲や決める人は自治体ごとに異なります。

    メリット

    この方法のいいところは、予定価格の内訳を気にしなくていいことです。
    費目がどの方法で積み上がっていても、予定価格さえきちんと出来上がれば、掛け算ひとつで算出できます。
    見積もりを参考に予定価格を作る業務でも、そのまま使えるわけです。

    注意点

    そのぶん「権限者の裁量で決める」ことから来る注意点が2つあります。

    1つ目は、手間がかかること。
    計算式で自動的に決まる方式と違って、案件ごとに人が決める作業が発生します。
    大事な数字ですから、なんとなくでは決められません。

    過去の類似案件などと見比べながら、妥当なラインを探ることになります。
    資料の準備も含めて、決める人にも担当者にも手間がかかります。

    2つ目は、入札前から、最低制限価格を知っている人がいること。
    知っているのは、決めた本人などごく限られた人だけ。
    金額を探る動きを招きやすく、最悪の場合は官製談合(発注側の職員が関わる談合)につながりかねません。

    せっかく予定価格を事前公表して漏えいリスクを消している自治体でも、この方法だと、そのリスクが最低制限価格という別の形で復活してしまうんです。

    ここまで見てきたように、この方法の負担は、最低制限価格を決める権限者に集中します。
    最低制限価格は、その数値を下回った入札を即失格にするライン。
    その重みを案件ごとに背負うことになるんです。

    設定方法② 入札額の平均で決める

    2つ目の方法は発想の転換です。

    事前に金額を決めるのではなく、各者の入札額をもとに、開札後に算出するやり方です。
    フリマアプリで値付けに迷ったら、同じ商品が売れた価格を見ますよね。
    あの発想です。

    こちらも公開されている例を見てみましょう(いずれも執筆時点の公開資料に基づいています)。

    • 立川市(東京都): 入札額の安いほうから順に「有効入札者数×60%」の数だけを取り、その平均額×90%を最低制限価格とする。対象は予定価格300万円以上の業務委託。有効な入札が5者未満のときは設定しない
    • 横須賀市(神奈川県): 業務委託の原則をこの方法とし、入札額の安いほうから採用割合(0.6〜0.7)分の平均×調整率(80〜90%)で算出。こちらも5者未満では設定しない

    立川市はこれを「変動型」、横須賀市は「平均額型」と呼んでいます。

    メリット

    考えてみれば、その業務の適正な相場をいちばん知っているのは発注者ではなく、日々その仕事をしている事業者さんですよね。
    この方法は、その人たちの値付け(=実際の入札額)をそのまま物差しにしてしまうんです。

    妥当な水準を、発注者が苦労して見立てなくて済む。
    しかも開札するまで誰にも最低制限価格がわからないので、探られる心配もありません。

    注意点

    ただし入札の数が少ないと、平均が偏ります。
    だから両市とも、「5者未満なら使わない」という条件を付けています。

    この方法を採用するなら、ここまで含めて導入例をまねるのがおすすめです。

    まとめ

    • 業務委託の最低制限価格には、工事・建設コンサルの「中央公契連モデル」のような共通モデルがない。それでも使える設定方法を2つ紹介
    • 国は中小企業の受注機会の確保・価格転嫁の観点から、業務委託を含む幅広い業種への最低制限価格制度の導入を促している
    • それでも市区町村の約6割は、清掃・警備・給食といった工事関係以外の業種に未適用。背景には、共通のモデルや積算体系がないことがある
    • 設定方法①は「予定価格の◯〜◯%」と範囲をあらかじめ要綱で決めておき、案件ごとに権限者の裁量で決める方法。積算体系がなくても予定価格さえあれば使えるのがいいところ。そのぶん決める手間と漏えいのリスクがあり、責任が権限者に集中する
    • 設定方法②は事前に設定するのではなく、各者の入札額をもとに開札後に算出する方法。相場を知っている事業者の値付けを物差しにするので、発注者が妥当な水準を見立てなくて済み、開札まで誰にも最低制限価格がわからない
    • ただし入札の数が少ないと平均が偏るため、導入例は「5者未満なら使わない」という条件付き。採用するなら、ここまで含めてまねるのがおすすめ

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    根拠条文

    • 地方自治法施行令 第167条の10第2項(最低制限価格) — e-Gov法令検索
    • 地方自治法施行令 第167条の13(指名競争入札への準用) — e-Gov法令検索
    • 官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(官公需法)第8条(地方公共団体の施策) — e-Gov法令検索
    • 民法 第632条(請負) — e-Gov法令検索

    参考文献

    • 「令和8年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」(2026年4月21日閣議決定)
    • 中小企業庁「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査」(2026年6月26日公表)
    • 総務省「低入札価格調査制度及び最低制限価格制度の導入状況に関する調査」(令和8年4月1日時点)
    • 「ダンピング対策の更なる徹底に向けた低入札価格調査基準及び最低制限価格の見直し等について」(総務省・国土交通省通知、令和4年3月9日・PDF)
    • 「ビルメンテナンス業務の調達における低入札価格調査制度及び最低制限価格制度の価格基準について」(厚生労働省通知、令和8年2月13日・PDF)
    • 盛岡市「業務委託契約に係る最低制限価格事務取扱要領」(2026年8月確認)
    • 立川市「変動型最低制限価格制度」(2026年8月確認)
    • 横須賀市「平均額型最低制限価格の算定方法について」(2026年8月確認)