業務委託の最低制限価格はどう決める? 工事のようなモデルがない場合の設定方法2選
うちの自治体では、最低制限価格は建設工事と建設コンサル業務の入札にだけ設定しています。
物価高で人件費も上がっているためか、最近は清掃などの業務委託にも導入を促す通知が国から来ています。
ただ工事と違って参考にできるモデルがなく、どう設定すればいいのかわかりません。
ほかの自治体はどうやっているのでしょうか?
うちの自治体では、最低制限価格は建設工事と建設コンサル業務の入札にだけ設定しています。
物価高で人件費も上がっているためか、最近は清掃などの業務委託にも導入を促す通知が国から来ています。
ただ工事と違って参考にできるモデルがなく、どう設定すればいいのかわかりません。
ほかの自治体はどうやっているのでしょうか?
「工事と違って参考にできるモデルがない」— まさにそのとおりです。
工事や建設コンサルの最低制限価格には「中央公契連モデル」に代表される、多くの自治体がお手本にしている標準的な算出方法があります。
ところが建設コンサルを除く業務委託には、こうした共通モデルがありません。
そこでこの記事では、導入済みの自治体が実際に使っている設定方法を2つ紹介します。
この2つの方法の特徴は、モデルがなくても設定できることです。
それぞれのメリットと注意点は、このあと順にお話ししますね。
そもそも最低制限価格は、どんな契約にも設定できるわけではありません。
法令上の根拠である地方自治法施行令167条の10第2項が、対象を「工事又は製造その他についての請負の契約」に限っています(指名競争入札にも準用されます)。
「請負」とは、仕事の完成を約束する契約のことです。
| 契約の種類 | 最低制限価格 |
|---|---|
| 工事・製造の請負 | ○ 設定できる |
| 清掃・警備などの業務委託 | ○ 頼み方が請負なら設定できる |
| 物品の購入・賃借 | × 対象外 |
「工事の制度」というイメージがありますが、条文上は請負全般が対象です。
清掃や警備も、契約の中身が請負に当たるなら設定できます。
逆に、物品を買う・借りる契約には設定できません。
早く2つの方法を知りたいところだと思いますが、その前に「背景」を少しだけ。
ここを読んでおくと、2つの方法が「なぜその仕組みになっているのか」を理解しやすくなります。
官公需(国や自治体が発注する仕事)には「中小企業がきちんと受注機会を得られるように」という法律が60年以上前からあります(官公需法)。
この法律は自治体にも、中小企業者の受注機会の確保に努めるよう求めています。
物価高で、この要請は一段と強まりました。
2026年4月には「官公需における価格転嫁・取引適正化のために必要な措置」を講じるという国の方針が閣議決定されました。
「価格転嫁」とは、上がったコストを契約金額にきちんと反映させることです。
ところが国の調査(2026年6月公表)では、官公需の価格転嫁率は48.4%。
コスト上昇分のうち、価格に乗せられたのは平均で半分以下でした。
安すぎる金額での受注は、しわ寄せが現場の人件費に向かいます。
清掃や警備のように人件費が中心の業務なら、そのまま働く人の待遇に影響します。
「安すぎる入札は最初から排除する」— 国は最低制限価格を、価格転嫁を下支えする仕組みと考えているんです。
だから工事だけでなく、業務委託を含む幅広い業種への導入を促しています。
ようするに「中小企業を守るために、最低制限価格制度を入れなさい」ということですね。
では、国が旗を振っているなら、各自治体はもう導入しているのでしょうか。
実態はそうではありません。
総務省の調査(2026年4月1日時点)では、市区町村の約6割が、清掃・警備・給食といった工事関係以外の業種に最低制限価格などの制度を適用していません。
同じ調査で、工事関係の業種(工事・測量・設計など)は約96%が適用。
「工事関係」か「それ以外」かで、明らかに差がついています。
では、なぜこんなに差がつくのでしょうか。
それは「積算基準」があるかないかの違いなんです。
全国の多くの自治体では、工事の予定価格を標準の積算基準と公表された労務単価で作っています。
だから予定価格の中身も「直接工事費」「現場管理費」といった共通の費目(費用の項目)で組み上がっています。
中央公契連モデルは、その費目ごとに掛け率を掛けて合計するだけの仕組み。
共通の積算体系があるから、共通のモデルが成り立つんです。
一方、業務委託はどうでしょう。
清掃・警備・給食調理・システム保守と、中身は多種多様。
どの自治体でも同じように使われている積算の仕組みがなく、見積もりを取って予定価格を作ることも珍しくありません。
掛け率を掛けようにも、掛ける相手の「費目」がないんです。
実は2026年2月、国はビルメンテナンス業務(清掃など)の価格基準を示しました。
中央公契連モデルのような共通モデルの「ビルメン版」ともいえるものです。
でもこの基準も、予定価格を費目ごとに積み上げて作っていることが前提の式。
見積もり頼みの自治体では、式に入れる数字がそもそも手元にありません。
逆に言えば、国の積算基準で予定価格を組んでいる自治体なら、この基準はそのまま使えます。

読者の疑問: じゃあ、業務ごとに積算基準を自作すれば?
それが、正直かなりの大仕事なんです。
先ほどの総務省調査でも、導入しない理由の上位は「必要性を感じていない」「体制・人手が足りない」「ノウハウや参考になる基準がない」でした。
基準と積算の壁は、全国の担当者に共通の悩みなんです(もちろん自前で積算体系を整えて、この壁を乗り越えている自治体もあります)。
そこで出番になるのが、冒頭でお話しした2つの設定方法 — モデルはもちろん、積算体系がなくても使える決め方です。
次の章から実例つきで紹介します。
1つ目の方法はシンプルです。
「最低制限価格は、予定価格の◯〜◯%の範囲で設定する」と、要綱などで事前に決めておく。
実際の額は入札の前に、その範囲の中で権限者が案件ごとに決める、というやり方です。
実際の例を見てみましょう(執筆時点の公開資料に基づいています)。
範囲や決める人は自治体ごとに異なります。
この方法のいいところは、予定価格の内訳を気にしなくていいことです。
費目がどの方法で積み上がっていても、予定価格さえきちんと出来上がれば、掛け算ひとつで算出できます。
見積もりを参考に予定価格を作る業務でも、そのまま使えるわけです。
そのぶん「権限者の裁量で決める」ことから来る注意点が2つあります。
1つ目は、手間がかかること。
計算式で自動的に決まる方式と違って、案件ごとに人が決める作業が発生します。
大事な数字ですから、なんとなくでは決められません。
過去の類似案件などと見比べながら、妥当なラインを探ることになります。
資料の準備も含めて、決める人にも担当者にも手間がかかります。
2つ目は、入札前から、最低制限価格を知っている人がいること。
知っているのは、決めた本人などごく限られた人だけ。
金額を探る動きを招きやすく、最悪の場合は官製談合(発注側の職員が関わる談合)につながりかねません。
せっかく予定価格を事前公表して漏えいリスクを消している自治体でも、この方法だと、そのリスクが最低制限価格という別の形で復活してしまうんです。
ここまで見てきたように、この方法の負担は、最低制限価格を決める権限者に集中します。
最低制限価格は、その数値を下回った入札を即失格にするライン。
その重みを案件ごとに背負うことになるんです。
2つ目の方法は発想の転換です。
事前に金額を決めるのではなく、各者の入札額をもとに、開札後に算出するやり方です。
フリマアプリで値付けに迷ったら、同じ商品が売れた価格を見ますよね。
あの発想です。
こちらも公開されている例を見てみましょう(いずれも執筆時点の公開資料に基づいています)。
立川市はこれを「変動型」、横須賀市は「平均額型」と呼んでいます。
考えてみれば、その業務の適正な相場をいちばん知っているのは発注者ではなく、日々その仕事をしている事業者さんですよね。
この方法は、その人たちの値付け(=実際の入札額)をそのまま物差しにしてしまうんです。
妥当な水準を、発注者が苦労して見立てなくて済む。
しかも開札するまで誰にも最低制限価格がわからないので、探られる心配もありません。
ただし入札の数が少ないと、平均が偏ります。
だから両市とも、「5者未満なら使わない」という条件を付けています。
この方法を採用するなら、ここまで含めて導入例をまねるのがおすすめです。
登録不要で押せます