結論: リース契約の仕組みを考えると「リースは割高」は原則正しい。それでもリースを選ぶ場面2選を紹介します
「リースは購入より割高だ」という首長の考えはよく分かります。
実は筆者も、おおむね同意だったりします。
ではなぜそう考えるのでしょうか。
リース契約の仕組みを知ると、その理由が見えてきます。
リース料の総額というのは、ざっくり言うと「品物の購入代金+リース会社のもうけ」です。
リース会社が自治体の代わりに品物を買って、貸してくれる。
その代わり、自治体は品物の代金に加えて、リース会社のもうけ分も払うわけです。
つまりリース料には、リース会社のもうけ分が必ず上乗せされています。
そうなると同じ品物を同じ値段で仕入れて、同じ期間使うなら、その分だけリースの方が高くなりますよね。
「リースは割高だ」というのは、ごくごく自然な主張に思えます。
ただここで「じゃあ全部購入にすればいい」とはならないのが、リースか購入かという問題の悩ましいところです。
自治体がリースを使うのは、もうけ分を払ってでも得られるメリットがある場面があるからです。
この記事では、そのメリットを具体的に2つ紹介します。
1つ目は、期間が終わったら「返却できる」という点です。
パソコンや複写機のように、数年で古くなって使い続けにくくなり、処分にも手間と責任がかかる品物があります。
こういう品物は、返却できることのメリットが大きいんです。
期間が終わったら返すだけで、処分はリース会社の仕事になり、契約で決めておけば保守も任せられます。
もうけ分を払ってでも、その手間と責任を手放せることがメリットになるわけです。
2つ目は、大型設備の導入を丸ごと任せられるという点です。
学校の空調やLED照明のように、何校分もの工事を自治体が自分で発注して工事監理するのは大変です。
ですがリースならリース会社と1本契約すれば、機器の調達から設置までまとめて頼めるうえに、支払いも平準化できます。
ここでも、もうけ分を払ってでも得られるメリットがありますよね。
このように、リースにするなら、もうけ分を払ってでも得られるメリットが何なのかを説明できないといけません。
では周りの職員が言う「支払いを分割できる(平準化)」はどうでしょうか。
2つ目のように、自治体でも一括で払うのが苦しいほどの大型案件なら、平準化は立派なメリットです。
でも一括で払える案件なら、支払いを分割するためだけに、わざわざもうけ分を払うことになります。
平準化だけでは理由として弱いのは、このためです。
リースか購入かに「絶対こっちだ」という一律の基準はありません。
でも「リース契約の仕組み」と「そのメリットを活かせる場面」を押さえておけば、担当している案件がどちらなのか、自分で考えて判断できるようになります。
首長に「なぜリースなのか」と聞かれても、自分で考えた筋道があれば、説明に困ることはありません。
それでは順番にくわしく見ていきましょう。
リース契約の仕組みとは? リース料の内訳を知ろう
結論では、リース料の総額を「品物の購入代金+リース会社のもうけ」とざっくりお話ししました。
ここでは、その「もうけ」の内訳をもう少し細かく見てみます。
内訳が見えると、民間がリースで得ているメリットが自治体には当てはまらないことも分かってきます。
まず前提として、リース契約に登場する3者を確認しておきましょう。
- 品物を使う自治体
- 品物を買って貸すリース会社
- 品物を売る販売店やメーカー
自治体が「これが欲しい」と品物を決め、リース会社がそれを販売店から買い取って、自治体に貸す。
自治体は、リース会社に毎月リース料を払います。
ここで大事なのは、品物の持ち主がリース期間中はずっとリース会社だということです。
自治体はあくまで「借りている」だけなんです。
ちなみに契約書や仕様書では、この品物のことを「リース物件」や「賃貸借物件」と呼びます。
リース料の内訳は5つ
ではリース会社は何を根拠にリース料を決めているのでしょうか。
リース料に入っているものを、リース会社の業界団体(公益社団法人リース事業協会)の説明をもとに表にしました。
| リース料に入っているもの | 何のお金か |
|---|
| 物件価格 | リース会社が販売店から品物を買った代金 |
| 金利 | リース会社が品物の代金を立て替えるためにかかっている利息 |
| 固定資産税 | 品物の持ち主であるリース会社にかかる税金 |
| 保険料 | 品物にかける保険の掛け金 |
| 管理費・利益 | リース会社の手数料と、いわゆるもうけ |
この5つを足して、リース期間の月数で割ったものが月々のリース料です。
金利がつくのは、リース会社が品物の代金をたいてい銀行などから借りて用意しているからです。
その借金の利息が、リース料に含まれているわけですね。
結論で「もうけ」と呼んだのは、物件価格より下の4つをまとめたものでした。
正確に言うと、リース会社の利益そのものは一番下の1つだけです。
残りの3つは、リース会社が品物を買って、持ち主でい続けるためにかかる費用ですね。
ただ自治体から見ると、この4つには共通点があります。
どれも、自治体が自分で買えばほとんど出てこないお金だということです。
買い物の分割払いに手数料がつくのと同じで、「代わりに買って、持ち主になって、貸してもらう」ことへの対価がリース料に乗っているわけです。
民間がリースにする理由は、自治体には当てはまらない
民間の会社がリースを使う理由としてよく挙げられるのは、次の2つです。
- リース料をそのまま経費にできる
- まとまったお金を用意しなくて済む(手元の資金を残せる)
でも自治体には、この2つがそのまま当てはまりません。
自治体は法人税を払わないので(法人税法4条2項)、「経費にできる」は理由になりません。
お金の用意も、自治体は税収や国からの交付税・交付金などでやりくりしていて、お金の規模が民間の会社とは違います。
たいていの備品は一括で買えるでしょうし、大型の工事案件なら起債(自治体が国や金融機関からお金を借りること)という仕組みもあります。
なので「まとまったお金を用意しなくて済む」ことがメリットになる場面は、自治体では限られるんです。
税金の扱いも、民間と自治体では違います。
民間の会社は、自分で品物を買っても固定資産税を払います。
だからリース会社が払う税金の分がリース料に乗っていても、損得は変わりません。
でも自治体が自分で品物を持っていれば、固定資産税はかかりません(地方税法348条1項)。
公用車なら自動車税も同じです(地方税法148条1項)。
なので自治体がリースにすると、買えば払わずに済む税金の分まで、リース料として払うことになります。
ようするに、もうけ分を払うのは民間と同じでも、自治体には民間のような見返りがありません。
しかも買えば出ない税金の分まで払います。
「リースは割高」という感覚が自治体で強く出るのは、このためだと筆者は考えています。
どういった案件をリースにすべき? リースのメリットを活かせる場面2選
ここまで見たとおり、リースにするなら、リース会社のもうけ分を払ってでも得られるメリットが必要です。
ではそのメリットはどんな案件であれば受けられるのでしょうか。
この章では結論で挙げた2つのメリットに合わせて、自治体のリース案件を「返却するため」と「一括で任せるため」の2つのタイプに分けて見ていきます。
この2つが、自治体がリースにするメリットだと筆者は考えています。
自分の案件をあてはめてみると、リースにする理由があるのか、それをどう説明するのかが見えてきます。
| タイプ | よくある案件 | 「なぜリース?」への答え | 期間が終わったら |
|---|
| ① 返却するためのリース | パソコン・複写機など、数年で古くなる品物 | 使い終わったら返却して、処分と保守を任せるため | 返却する |
| ② 一括で任せるためのリース | 学校の空調・LED照明など、何校分もの設備工事 | 調達から設置まで1本の契約で導入するため | 多くは無償で譲り受ける |
① 返却するためのリース — パソコン・複写機など
パソコンや複写機は、数年たつと使い続けにくくなります。
パソコンはOSのサポートが切れ、複写機は保守部品の供給が終わるからです。
しかも処分が面倒というおまけ付きです。
パソコンならデータを確実に消す責任があり、どちらも産業廃棄物として処分する手間がかかります。
リースなら、期間が終わったら返すだけです。
品物の持ち主はリース会社なので、処分はリース会社の仕事になります。
契約に保守を含めておけば、故障のときの窓口もリース会社1本です。
ただし返却のときのデータ消去や運び出しを自治体側の責任にされる契約だと、このメリットは小さくなります。
仕様書は、返却できるメリットを活かすことを念頭に置いて作るのがおすすめです。
たとえばデータ消去の証明書を出すこと、運び出しと処分はリース会社の負担で行うこと、といった項目です。
そして一番大事なのは、期間が終わったら所有権が自治体に移る、という約束を最初から入れないことです。
それを入れると返却できるというメリットを自ら捨てることになり、ただ分割払いで買っているのと同じになってしまいます。
もうけ分を払う理由が、なくなってしまうんです。
② 一括で任せるためのリース — 学校の空調・LED照明など
学校の空調やLED照明を全校に入れるとなると、何校分もの設備工事になります。
これを自治体が自分でやると、入札から各校の設計・工事監理まで自前で抱えることになります。
工事を発注して完成までこぎ着けるのは1件でも手間がかかるので、それが何校分となるとかなりの負担です。
リースなら、リース会社と1本契約すれば、機器の調達から設置、期間中の保守までまとめて頼めます。
支払いも、工事なら完成したときにまとめて払いますが、リースなら毎年のリース料に分割されるので平準化にもなります。
たとえば和歌山県御坊市は、小中学校9校のLED照明を賃貸借(リース)で発注しています。
仕様書の履行内容には調達・撤去処分・設置・維持管理が並び、期間満了後の扱いはこう書かれています。
⑺ 賃貸借契約期間満了時の取り扱い
賃貸借期間満了後は、発注者へ無償譲渡するものとする。
御坊市の例のように、このタイプは期間が終わっても返さないことが多いんです。
天井に付けた照明や空調をわざわざ外して返すのは現実的ではなく、自治体もそのまま使い続けたいからです。
所有権が自治体に移るので、実際は「導入を丸ごと任せた分割払いの購入」に近くなります。
なお起債が使える工事なら、起債で財源を確保して自治体が工事を発注する方法もあります。
このタイプでリースが効くのは、起債が使えない案件か、起債が使えても自分で工事を発注するのがよほど大変な案件です。
理由が「支払いを分割するため」だけなら、購入を考えた方が自然
「なぜリースなのか」と聞かれたとき、多くの職員が最初に口にするのが「支払いを分割できるから」、いわゆる平準化です。
筆者もこの答えを何度も聞いてきました。
でも理由が平準化だけということは、返却できることにも、導入を丸ごと任せることにもメリットがない案件だということです。
一括で買える備品なら、支払いを分割するためだけに前の章で見たもうけ分を払うことになります。
こういう案件は、購入を考えた方が自然です。
「リースは割高」にも例外がある — 役所ならではの事情と、残価設定の落とし穴
ここまで「リースは購入より割高」と言われる理屈を見てきました。
リース料にはリース会社のもうけが乗る。この仕組みは、どんな案件でも変わりません。
ただ結論でも書きましたが、この理屈は「同じ品物を同じ値段で仕入れるなら」という前提です。
案件によっては、その前提が崩れてしまう自治体ならではの事情があります。
この章では、そんな例外と、見積を見るときの落とし穴を1つずつ見ていきます。
例外 — 自治体が買う値段は、民間の会社が買う値段より高くなることがある
同じ品物でも、自治体が買う値段は、民間の会社が買うより高くなることがあります。
つまり「同じ値段で仕入れるなら」という前提が、ここで崩れるわけです。
主な理由を2つ紹介します。
1つ目は、最低制限価格や低入札価格調査といった、いわゆるダンピング対策制度の存在です。
学校の空調のような工事を自治体が自分で発注する場合、多くの自治体は安すぎる入札に歯止めをかけるために、こうした制度を設けています。
その結果、落札額は一定の金額を下回りにくくなります。
一方、リース会社が発注する工事は民間同士の取引なので、この歯止めがかかりません。
そうすると同じ工事でも、リース会社に発注してもらった方が安く済むことがあるわけです。
2つ目は、筆者の経験になりますが、自治体向けの見積が高めに出てくる業種があることです。
首長から「民間ならもっと安い」と言われて、相手を増やして参考見積を取り直したことがあります。
それでも、首長が言うような金額の見積は出てきませんでした。
筆者の推測ですが、自治体が参考見積をもとに予定価格を決めることは、事業者側もよく知っています。
参考見積は本番の入札ではないので、そこで安い金額を出す理由が薄いのでしょう。
むしろ参考見積が高いほど予定価格も高くなるので、事業者に損はありません。
それに自治体向けは書類や手続きの手間が多く、その分が乗っている面もあると思います。
リース会社は自身で仕入れた値段に、リース会社のもうけを乗せます。
自治体が自分で買う値段の方が、そのもうけを乗せた値段より高いこともあるわけです。
なので理屈だけで「リースは割高」と決め打ちしないことです。
契約の形を決める前に、リースと購入の両方の参考見積を取って、総額を並べてみましょう。
比べるときは、同じ機種を同じ年数使う前提にそろえます。
購入側には、保守の費用と最後の処分にかかる費用を足します。
公用車のように使い終わっても売れる物なら、売却の見込み額を引きましょう。
そのうえで、リース側の総額と比較してみてください。
参考見積は落札額ではないので、あくまで目安です。
それでも、その案件が理屈どおりなのか例外なのかは見えてきますし、首長や財政担当に説明する材料にもなります。
落とし穴 — 残価設定のリースは、月々の金額が安く見える
自治体のリース契約の代表といえば、公用車ですよね。
ただ先ほどの2つのタイプに当てはめてみると、公用車は少し迷いどころです。
車は10年以上使えるので「数年で古くなるから返却する」という理由は弱く、処分も廃車の手続きが主で、パソコンほどの手間や責任はありません。
公用車をリースにする一番のメリットは、メンテナンス込みの契約にして、車検や定期点検の管理をリース会社に任せられることでしょう。
台数が多いと車検の時期を管理するだけでも手間ですし、うっかり車検切れの車に乗ってしまう心配もなくなります。
ただその手間をなくすために、リースで借りている間はずっとリース会社のもうけ分を払い続けることになるので、筆者は長く使う公用車は購入寄りだと考えています。
その公用車のリースでよく出てくるのが「残価設定」です。
残価とは、リース期間が終わったときにその車に残っている価値のこと。
自治体側からすると、車両価格から残価を差し引いた分をもとにリース料が計算されるので、月々の金額が安く見えます。
でも安く見えるのは、残価の分をまだ払っていないからです。
期間が終わったら、車を返すか再リースするか、契約によっては残価を払って買い取るかを選ぶことになります。
再リースにしても、残価の分をまだ払っていないので、リース料が大きく下がるとは限りません。
一方、購入なら期間が終わっても車は自治体のものです。
そのまま乗り続けてもいいですし、物によっては売ることもできます。
残価を引いたリース料と購入価格をそのまま比べると、この差を見落とします。
自治体の公用車は、10年以上使うことも珍しくありません。
残価設定が効くのは、大きな行事の期間だけ使う車のように、使う期間が最初から短いと決まっている場合です。
なので見積を比べるときは、残価を引いたリース料だけを見ないことです。
残価の分と、期間が終わったあとにどうするかまで含めて、購入の見積と比べましょう。
まとめ
- リース料は「品物の購入代金+リース会社のもうけ」で、もうけ分が必ず上乗せされる。だから「リースは割高」という主張は、ごく自然
- 自治体には、民間がリースで得ている見返り(経費にできる・お金を用意しなくて済む)が少なく、自分で買えば非課税になる税金の分までリース料で払う。割高という感覚が自治体で強く出るのはこのため
- それでもリースにする意味があるのは、期間が終わったら返却できることにメリットがある案件(パソコン・複写機)と、大型設備の導入を丸ごと任せる案件(学校の空調・LED照明)。「支払いを分割するため」だけでは理由として弱い
- 期間満了後に無償で譲り受けるリースは財産の取得と見られることがあるので、議会の議決が要るかを確認する
- 原則には例外もある。自治体が買う値段は民間より高くなることがあり、リース会社に頼んだ方が安く済む場合もある。契約の形を決める前に、リースと購入の参考見積を両方取って総額を比べる
- 残価設定(満了時に見込む車の価値を差し引く方式)のリースは、残価の分をまだ払っていないから安く見える。残価や満了後の扱いまで含めて比べる
- リースか購入かに一律の基準はない。「なぜリースなのか」は、リース会社のもうけ分を払ってでも得られるメリットで説明する。それが言えれば、首長にも説明できる